豪奢な衣の帯を締めていると、主の指がそっと礼の頬に触れた。
「――そなたに会えて良かった」
何と応えて良いか分からず、礼は視線を漂わせた。
「良かった」
頬を撫でる指から、乾いた体温がゆっくり移る。
そのせいだろうか。
胃の底が締めつけられるような感覚に、礼は襲われた。
何故この方なのだろう。
先帝がもっと子をもうけていれば、この方は一皇子として穏やかに暮らせたろうに。
「……光栄に、ございます」
手元がぼやけた。
ああ、泣くなんて子供の頃以来だ。
止めなくては。
今不埒な輩が入って来たら、手向かいできない。
「そなたの泣き顔は、初めて見るな」
「……申し訳……ござ……」