時計を見ると5時を告げる鐘がちょうど鳴りだした。


「そうだね…帰ろっか。」


…実はこの時間に帰るのには佐々木の配慮があるのを私は知っている。


受験生である三年生は、みんな6時間目が終わるとすぐ帰るので、この時間まで残っている人は少ない。


また、後輩たちも今は絶賛部活中なので会う確率は低い、ということだ。


多分だけど、佐々木はそれを踏まえて帰る時間を決めてくれてる。


2人が一緒に帰るのに、支障のない時間。


だから私達はクラスの男子にからかわれたりすることもなく、毎日平和なのだが……



正直、この関係がもどかしい。


届きそうなのに、届かない。

あと少しなのに──。


佐々木の後ろ姿が、とても遠く感じてしまう。