綱樹は席を立って、いいものを取ってくるのでしばらく待つように伝えると10分ほどしてもどってきた。


「おまたせしてすみません。ちょっとしたアイテムを持ってきました。
これを使えば、あなたの未来が予測できるかもしれないと思いましてね。」


「未来を予測?この先私がどうなるのか・・・ですか?」


「それじゃ占い師みたいですけどね、私のはもっと限定されていて、あなたをとりまく空気というか時空の流れというか風みたいなものをこのアイテムで測るというものです。

これは時空を掌る神が時空のゆがみを調べるために使用するものなのですが、本物はとても巨大で人間には扱えないため、人間用に小さくしたのがこの板です。

なぜ教会にあるのかといいますと、ゆがみが人間にとくに関係した原因だと人間も時空神に協力せねば、世界が終わってしまいます。
人の努力と神の力とが合わさってこそ、正常な時空の流れが回復するのです。

青い本や赤い本はおそらく、その正常な時空の流れを妨げる危険性を持ったアイテムだと思われます。」


「じゃ、私や祐希さんが来たことでゆがんでると?」


「おそらく。祐希さんが飛ばされてきたときには、本を抱えてやってきただけだったのに、あなたが来たときには、祐希さんの一部が魔物となりあなたの体にとりついた状態でここへきた。

あなたの体に魔物が巣食わなければ、あなたの肉体や精神は時空の風の抵抗にあって粉々になっていたんだと思うんです。
それだけの魔族のパワーの補助が必要だった。」


それから、綱樹は一見タブレットにも見える板に何かしらの呪文の言葉を投げかけると、板の上面に宇宙のような画像が映し出された。


「あっ!!!これは・・・なんてことだ。
そんな・・・世界を脅かしているのは魔族ではないかと思っていたのに・・・。」


「あの、綱樹様?どうされたんですか?」


「すみません・・・取り乱してしまって。
私も今これを見るまで・・・ぜんぜん気付かなかった。

時空のゆがみを起こしている原因は、神の側だとわかったのです。」


「ええっ!!でも、リズは天使になって・・・」


「そうです、彼は時空の神の使いとなって上がったと思われます。
しかし、正式な時空神がいない。

いつのまにか、世界と世界を正常につなげるための危険地域への結界がすべて解かれてしまっているようです。

これの意味するものは・・・。」


「意味するものは・・・時空を管理する人がいない?」


「はい、何かのトラブルによって時空神が消えてしまったのでしょう。
そして新しい担当者が決まっていないようです。

この状態だと、あなたのような不必要な悲しいトラベラーがいろんな世界にとばされてるやもしれません。」


「ええっ!!!私の他に・・・別の世界にも・・・。
じゃ、ここではどうなってしまうんですか?」


「最悪な場合、あなたは突然ここから消えて、どこへ飛ばされるやもしれません。
まぁ、あなたの身の内には強いしもべさんがついているから、分解、消去ってことはないと思われますが、祐希さんが消えると・・・。」



「分解されちゃうかもしれない?そんな、そんなのはダメです!
早く、早く次の時空神って神様は着任しないんですか?
それはこちらからは文句言えないの?」


「相手は神ですからね。ヘタに言葉を放てば、即死させられてしまいます。」



「あ・・・・・なんてこと。でも、リズは時空天使に召されたわけですよね。

だったら、リズに頼むことってできませんか?」


「前のリズと今も意識の中で対話できますか?」


「前はできたけど・・・今は・・・何も。」


「それだと厳しいですね。
コンタクトをとれれば、事情をきいてお願いすることくらいはできるかもしれませんが・・・。」


「私、なんとか呼んでみます。
私をずっと守ってくれたリズですもの。
必死で頼めば、前のように、挨拶くらいはしに来るんじゃないかと思うんです。」


「だといいですが・・・でも、それがいちばん手っ取り速い方法でしょうし、やってみて悪いことはありませんから、今夜にでもやってみてください。

今夜は快晴で星もよく見えます。
あなたに力が集まる可能性は高いはずです。」


「はい、綱樹様、いろいろと助言していただいてありがとうございました。
リズに何かを教えてもらえたら、またお話にきますね。」


「ええ、いい情報を待っています。
私も、他の伝道師と協力して、乱れた時空をなんとかすべくいろいろ調べてみますから、お互い力を尽くしましょう。」


「はいっ!」