では、どうしたらいちこと祐希が元の世界へともどれる条件がそろうのか?

それは、青い本以外の色の本をひろげ、いちこが宇名観へやってきたときと同じ姿であることが条件となるのだった。

結果的に、赤い本を使用して七杜がいちこの胸の穴を埋めた形になったので、帰れる条件はできあがったことになる。


しかし、実際のところもどっていった話などどこにも記録がないので、この先が行き詰ってしまったというわけだった。


「なあ、いちこ・・・もし、新しいリズがいるんなら呼び出してみてくれないか?

そいつが七杜なんだろ?みんなで見れば七杜なのかどうかわかるはずじゃないか。」



「あっ・・・そうだわ。うん、やってみる。」


いちこは以前リズナータを呼んだときのように、愛してるとつぶやいた。

すると、ボンッ!!!とみんなの目の前に現れたのは以前よりもごつい体格をした魔族だった。」



「うわっ!ちょ、ちょっといきなり・・・やめろって。
それにどうして、そんなに俺の体をじろじろ見るんだよ。」


「リズナータだよね・・・。あなた?」


「たぶん、そうだと思う。
俺、少し記憶が欠けてしまってて、以前のことが思い出せないんだ。

だけど、前より力はすごくみなぎってると思うし、いちこの中にいるのがとても心地いいんだ。」


そこまでリズナータが話したところで、高千が叫んだ。


「間違いない。七杜だっ!
あいつ、リーダーのくせにいちこのそばが落ち着くだの、くっついていると幸せだろうなとか、よく言ってた。」


「な、なるほど・・・。私もそれはきいたことがあります。」

静歌や聖智も納得していた。


落ち込んだ空気が少しだが、明るさをもどしたようだったが、いちこは涙を流した。


「七杜さん・・・。鬼はどうしちゃったんだろう。
鬼に体を使わせていたのに、今度はリズになって私の僕になるだなんて。」


「いちこ、泣いちゃだめよ。
七杜はすすんであんたの中へ住まうことにしたの。

私は思うんだけどね、七杜は鬼の体になったときから、いろんなことを覚悟してたんだと思う。

でも、鬼の体を受け入れるのとは違って今度は宿主はいちこなの。
いちこという宿に彼は住みたかった。
ほら、リズの表情を見てごらんなさい。

あなたの僕であることがうれしそうだわ。」


「リズ・・・。これから私を守ってくれる?」


「おう、任せておけって。
で、まずは心機一転の俺にとっての信頼の証にキスしてやるからな。」


「えっ!?えっ・・・えええ!!!」


「ま、まずい!みんなリズを阻止するのよ!
うわっ、だめ、間に合わない。」


「ん・・・うん・・・。いち・・こ。ちゅ、ちゅっ、ちゅちゅ。」


「おい、七杜!リズのキスは毒だ!やめろってば!!!」


退治屋のメンバーは顔を蒼白にしながら、いちこの様子を恐る恐る眺めてみると・・・。


「リズ、好きっ。チュッ・・・」


「いちこ。大好きだぞ。」


「どういうことだ?リズのキスを受けたいちこは淫乱女に変貌するんじゃなかったのか?
なんで、こんなかわいいラブコメ展開のキスしてお互い赤くなっちまってんだ!!!おかしいじゃないか。」


すると、静歌が冷静に説明し始めた。

「本来のリズナータは天使になったわけですよね。
そして、今のリズナータは七杜の一部なんです。

七杜は魔族ではないし、リズナータの魔力の後始末的な効果でいちこを宿主としているんです。

つまり正真正銘のいちこの僕です。
だから七杜リズのキスは愛の証ということになります。」


「なっ・・・なんだと。」


「いちこがうっとりしてるぞ!」


「しまった!七杜にやられたな。」


いちことリズナータが抱き合っている前で退治屋の男たちが悔しさからの叫びをあげていたのはいうまでもないことだった。