胡紗々の病院の一室でいちこは、目を閉じたままベッドで寝かされていた。
足が温かいことや、朔良や静歌の診たてから植物人間状態と同じ扱いをするしかなかった。
聖智が消えた祐希の足取りを追跡して、ある霊の類からリズナータの色本の秘密について聞き出してきた。
「リズナータとは本来は生き物の魂やら、記憶やらを人間から切り離し、弱い魔族の力の補助とする本を作っていた悪魔だったそうだ。
俺たちの知っているリズナータは、確かに悪魔要素はたくさんあって、凶悪な部分は拭い去れないが、いちこに対してはかなり誠実で、優しく、そしてとても勇敢だったよな。」
「聖智、すまないが結論を先に言ってくれないか。
俺たちは今、いちこが起きてくれることと、祐希が元気にもどってきてくれることだけを祈っている。
詳しい説明はそれらが解決してからでもいいんじゃねえか?」
「あ、そうだったな。」
七杜の願いがみんなの思うところなのは間違いないと納得した聖智は、冷ややかにやるべきことを口にした。
「この中の誰がが次のリズナータになっていちこの中に住み続けるんだ。」
「なっ!!!」
聖智は続いて説明を始めた。
リズナータのばらまいた本のうち、赤い本が町はずれに住む真衣華というおばあさんが先祖代々持っているという。
しかし、開けば禍が起こり、本の中に連れ込まれるという先祖の伝え話があり、誰も本を開けないまま古い納屋にしまわれていた。
「その赤い本を開けば、次のリズナータになるってことなのか?」
「たぶんな。前のリズナータは祐希だったんだ。
だから、祐希はこの世界へきて、いちこを呼び寄せた。
つながりがあったということだ。
だが、リズナータの本性というか本体がまさかの昇天をはたしてしまったから本の効果も以前とは違っているかもしれない。
その赤い本に吸い込まれた男の心はリズナータとなり、いちこの心臓とピアスに同居するだろうが、残った器、つまり肉体と残った感情なんかは祐希のように普通の生活をするのに対応できるかどうかわからない。
肉体が腐って、もう残らない可能性が高い。」
「で、祐希はどうなるんだ?」
「祐希は問題なく、元に戻れるはずだ。
今頃、自分のなくしていた一部がもどってきて、待機中ってところだろうな。
結局は、次のリズ待ちってことだ。
で・・・どうする?って相談だな。」
「肉体が腐って残れない・・・か。
だが・・・わかった。
俺が赤い本を読もう!」
「七杜!!おまえは退治屋の社長だぞ、おまえがいなきゃ、ここは成り立たねえだろ!」
高千は七杜に飛びついて叫んだ。
「そうだ、おまえは退治屋の主。
腕のたつだけの俺が逝く方が似合ってるというものだ。」
今度は蒜名が立候補する。
それに続いて、皆が赤い本を読む権利をめぐって言い争いになった。
「七杜が行きなさい!」
そう、朔良が言いだして、その場がすぐに静かになった。
「他のメンバーがいないのは退治屋が成り立たなくなるわ。
七杜なら、力も精神力も人望もあるし、いちこもみんなも平等に愛してくれてるわよね。」
「じゃ、退治屋の社長はどうするよ?」
「蒜名がやればいいわ。口数が少なくても、実務は私と晴海でかなりこなせるし、大丈夫。」
「じゃ、決まりだな。
俺は明日、真衣華ばあさんとこに行って来るよ。
本をもらいにいったら、明日は宴会して見送ってくれよな。」
「七杜・・・。」
退治屋のメンバーはとくに反論も意見もいわず、黙って納得するしかなかった。
足が温かいことや、朔良や静歌の診たてから植物人間状態と同じ扱いをするしかなかった。
聖智が消えた祐希の足取りを追跡して、ある霊の類からリズナータの色本の秘密について聞き出してきた。
「リズナータとは本来は生き物の魂やら、記憶やらを人間から切り離し、弱い魔族の力の補助とする本を作っていた悪魔だったそうだ。
俺たちの知っているリズナータは、確かに悪魔要素はたくさんあって、凶悪な部分は拭い去れないが、いちこに対してはかなり誠実で、優しく、そしてとても勇敢だったよな。」
「聖智、すまないが結論を先に言ってくれないか。
俺たちは今、いちこが起きてくれることと、祐希が元気にもどってきてくれることだけを祈っている。
詳しい説明はそれらが解決してからでもいいんじゃねえか?」
「あ、そうだったな。」
七杜の願いがみんなの思うところなのは間違いないと納得した聖智は、冷ややかにやるべきことを口にした。
「この中の誰がが次のリズナータになっていちこの中に住み続けるんだ。」
「なっ!!!」
聖智は続いて説明を始めた。
リズナータのばらまいた本のうち、赤い本が町はずれに住む真衣華というおばあさんが先祖代々持っているという。
しかし、開けば禍が起こり、本の中に連れ込まれるという先祖の伝え話があり、誰も本を開けないまま古い納屋にしまわれていた。
「その赤い本を開けば、次のリズナータになるってことなのか?」
「たぶんな。前のリズナータは祐希だったんだ。
だから、祐希はこの世界へきて、いちこを呼び寄せた。
つながりがあったということだ。
だが、リズナータの本性というか本体がまさかの昇天をはたしてしまったから本の効果も以前とは違っているかもしれない。
その赤い本に吸い込まれた男の心はリズナータとなり、いちこの心臓とピアスに同居するだろうが、残った器、つまり肉体と残った感情なんかは祐希のように普通の生活をするのに対応できるかどうかわからない。
肉体が腐って、もう残らない可能性が高い。」
「で、祐希はどうなるんだ?」
「祐希は問題なく、元に戻れるはずだ。
今頃、自分のなくしていた一部がもどってきて、待機中ってところだろうな。
結局は、次のリズ待ちってことだ。
で・・・どうする?って相談だな。」
「肉体が腐って残れない・・・か。
だが・・・わかった。
俺が赤い本を読もう!」
「七杜!!おまえは退治屋の社長だぞ、おまえがいなきゃ、ここは成り立たねえだろ!」
高千は七杜に飛びついて叫んだ。
「そうだ、おまえは退治屋の主。
腕のたつだけの俺が逝く方が似合ってるというものだ。」
今度は蒜名が立候補する。
それに続いて、皆が赤い本を読む権利をめぐって言い争いになった。
「七杜が行きなさい!」
そう、朔良が言いだして、その場がすぐに静かになった。
「他のメンバーがいないのは退治屋が成り立たなくなるわ。
七杜なら、力も精神力も人望もあるし、いちこもみんなも平等に愛してくれてるわよね。」
「じゃ、退治屋の社長はどうするよ?」
「蒜名がやればいいわ。口数が少なくても、実務は私と晴海でかなりこなせるし、大丈夫。」
「じゃ、決まりだな。
俺は明日、真衣華ばあさんとこに行って来るよ。
本をもらいにいったら、明日は宴会して見送ってくれよな。」
「七杜・・・。」
退治屋のメンバーはとくに反論も意見もいわず、黙って納得するしかなかった。