直之は松江に引っ張られて用意された寝室に行った。いつもどこかの城に泊まるとやたら華美に飾られた、一人で寝るのには広すぎる寝室を用意されていたが、ここではちょうど良い広さで、落ち着いた雰囲気の部屋である。
松江はせっせと直之を夜着に着替えさせていく。

「殿がお酒に強いのは重々承知しておりますが、ここは和那の国。少しはわきまえて下さいませ。」

西国一の猛将軍に松江は堂々と説教を始めた。

「鈴の様子はどうじゃ?」
「殿のせいで嫁入りのときは常に心ここに在らずでしたが、最近ではよく笑っていらっしゃいます。」

松江はわざと刺々しく話をした。

「相変わらず松江には敵わん。吉辰殿とは上手くやっておるのだな。」

直之は苦笑をもらしながら話す。

「吉辰様はとても鈴姫様を大事にして下さいます。これも殿がようやく鈴姫様に相応しい殿方をお選びになられたおかげです。」

松江は直之の腰紐をきつく結び、直之の前にたち、真っ正面から向き合う。

「次殿が鈴姫様を泣かせるようなことがあれば、私は殿に刀を向けることになります。殿、どうか鈴姫様がようやく手にした幸せを奪わないで下さいまし。」

松江は躊躇することなく猛将軍に言い切った。