なるべくゆっくり歩き、遠回りをして行った。

殿方が宴を開いている部屋にたどり着くと、大きく深呼吸をして、鈴姫は襖を開けた。

「失礼致します。」

下を向いたまま、直之と目を合わせないようにした。漬け物がのったお皿を置き、空になった酒瓶やお皿をお盆にのせて、鈴姫は素早く部屋を出ようとする。

しかし、直之のほうが一枚上手であった。

「鈴‼わしについでくれ!」

お酒に酔って上機嫌の直之に止められた。鈴姫は思わず吉辰を縋るように見てしまった。吉辰は鈴姫の訴えるような視線に気付いたのか、鈴姫に笑みを向ける。

兄の機嫌を保つためにも、断るわけにはいかないと鈴姫は思い、直之と吉辰の間に座りお酒をつぎはじめた。