鈴姫ははっと顔を上げ、吉辰を見る。
優しい笑みを浮かべて煮物を食べていた。

(吉辰様の笑み、安心するな…。)

「鈴、どうかしたか?」
「えっ⁈」

鈴姫は気付いたら頬を涙がつたっていた。吉辰が美味しいと言ったことで肩の荷が降りて少々気が抜けたようだ。

「申し訳ありま…‼」

鈴姫の謝罪は吉辰が鈴姫の涙を拭うことで遮られた。
しかし、父である辰之介がいる手前、余計に恥ずかしくなり涙が止まらなくなった。

助け舟をだしたのは松江である。

「殿方、お味噌汁と煮物をお作りしたのは鈴姫様でございます。」

「ほう‼鈴姫か‼そなた腕がいいのう。しかし何故泣いておるのだ?」

「父上、今は夕餉を楽しみましょう。詳しくは後ほど。鈴も冷めぬうちに食べるとしよう。」
「ふむ…。」
「…はい。」

松江と吉辰の機転で夕餉は無事に終わった。