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「綾愛、美華。次移動教室。行こう」

「うん、行こう!綾愛!」

「あ、うん」



朝のHRも終わり、次は移動教室。わたしは授業の用意物を持って、里依紗と美華と教室を出る。



「あ、神山」

「えっ」

「ほんとだ!綾愛、神山くんいるよ!」

「え、あぁ……そうね…」



教室に向かう途中の廊下。見慣れた明るい茶色の髪。


そこで友達と無邪気に笑う、神山 大地の姿。



…なによ。あんな笑い方も出来るんじゃない。

いつも、あの余裕そうな笑顔しか見たことがないから…、なんか、新鮮。


その時、神山 大地と視線がぶつかった気がして…、すぐに目を逸らす。


…なに見とれてんだ、わたし。
ばっかみたい。



「里依紗、美華、早く行こ」

「え、綾愛!?待って!」



神山 大地の横を通り過ぎる。…何故だか、少し緊張して。



「……」



通り過ぎたわたしの背中を、神山 大地が見てたことは知らない。



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