「……えっ?」


その言葉を聞くなり、ガバッと。ナオは勢いよく顔を上げた。

…うゎっ。

びっくりして、思わず仰け反ってしまった俺のことなんて完全無視。


「龍ちゃん、い…今、何て言った?」


興奮気味に。

キラキラと、期待に満ちた瞳で俺を見上げている。


「ごめん、もう1回言って?」

「…え?」

「聞き逃しちゃった。」

「はぁっ?嘘だろ?お前、ばっちり聞いてたじゃん。」


この距離で聞こえないわけがないし、

その表情は明らかに、“わかってる”顔だろ。


「は~や~く~」


……っ。

口を尖らせて、まるで子供みたいにごねるナオ。


「何回も言えるかっ。こっぱずかしい!」

「え~?何が?どこが?ホントにそう思ってるなら何回でも言えるでしょ?言いたくなるでしょ?」

「……っ」

「あっ、嘘なんだ?空耳?幻聴?龍ちゃんは、やっぱり私のことなんて…」


あーっ、もうっ。


「私じゃ“満足”できないから…んっ」


ぐいっと、俺は再びナオの身体を引き寄せた。

そして……


「少しは黙ってろ。」



うるさい口を、塞いだ。