「龍…ちゃん?」


ほとんど無意識に手を伸ばして。

顔にかかった髪を払いながら、その柔らかい頬に触れた…とき。


それに気づいたのか。ナオがふいに目を覚ました。


「え…?な…んで?」


ぼんやりした瞳で、だけどまっすぐに俺を捉えている。

こうやって、ちゃんと顔を合わせるのも1週間ぶり。

なんだかすごく新鮮で、妙に落ち着かないのは気のせいか?


「なんで、龍ちゃんがここにいるの?」

「…ん?」

「授業は?木下先生は?」


意識がはっきりしてきたのか、ナオはガバッと起き上がると、まくし立てるように言った。

授業はいいとして、なんでまた、木下?

その名前にはいい加減うんざりだ。…早く忘れたい。


「俺は、お前を探しに来たんだよ」


気を取り直して。さっさと本題に入ろう。


「お前に言わなきゃいけないことがあるから…」


サチ姉の言葉を思い出す。


悪いのはナオだけじゃない。

原因は、ナオを不安にさせている俺にもある。

だからちゃんと言ってやらないと。


「俺は、ナオのこと…」



意を決して、口を開いたのに…



「ごめんなさいっ」