「だから“彼女”はいらないし、木下ともつき合えない」


ストレートに。
“木下にもわかるように”答えたつもり。

さすがに、これ以上細かいことは言わないけど。


「…え?」


すぐには理解できなかったのか、一瞬睫毛をパチクリとしたものの…


「やだーっ、沢木くんってば。冗談はいいよぉ」


きゃはは、と笑い飛ばしやがった。

つくづく失礼なやつだ。


「いや、本当だから」

「無理しなくていいよ。
マミ、お笑いは好きだけど、沢木くんにそれは求めてないからぁ。」

「……。」


コイツ…
まったく信じちゃいない。

でも、信じてもらうしかないよな。


「木下だから話すんだけどさ…」


声をひそめて、少しだけ顔を近づけて囁けば、案の定…

雰囲気に流された木下は、真剣な顔になった。


「俺、マジで2年前に結婚してるんだ。」

「えっ?」

「“妻”のことを愛してるし、浮気はしない主義だし…何より、」


ここで、ひと言。


「木下には“不倫”なんてさせたくないから」



……そんなこと、本当は、全然思っちゃいないけど。


これでオッケー。