「なんでもないですよ」


いつも、龍さんにこんな風に


ごまかされてるんだから、たまには


逆があってもいいと思う。




龍さんは不満そうにこっちをみて


いたけれど、それ以上はつっこんで



来なかった。






その日の練習も無事に終わり


龍さんがだらだらと教室に戻るのを


隣で眺めていると。





ふと、視線を感じて顔を上げる。



すると、1人の男の人と目があった。



その人は、私の目を見つめていて…




私のことが、見えてる…?





驚かず、ただ冷たい視線を私に


投げかけるその人は


なにか言いたげだった。





その言葉が、聞こえた気がした。




『ここは、お前のいるべき場所じゃない』