「家どこ? もう遅いし送ってく。
女子がこんな遅くに一人で歩くと危ないし」

黒い目が私をジーッと見る。

さっきの涙は幻想だったのではないかと
思うくらい無表情だったけど、無表情に見えるだけなんだなあ。

送る。なんて一輝君の口から出るとは…。
「ありがとう!」

なんだか女の子扱いされたことが
嬉しかった。

私を送ってくれる間も、一輝君はほとんど喋らなかった。