だけど、5ヶ月前の雨の日

部活帰りの私は、捨てられた子猫の入ったダンボールの前に
一輝君が佇んでるいるのを見かけた。

「一輝君。」

土砂降りの中、傘をさしてダンボールの前に佇んでいる姿はなんだか
幽霊みたいでとても怖かった。

声をかけても聞こえていないのか振り向いてさえくれない。

ぴしゃり、ぴしゃり。

一機くんのもとへ足を踏み出すたびに
水たまりが跳ねる。

「一輝君。」

今度はもっと近くで声をかけてみる。

「ん? ああ人見さんか・・・。」

今までクラスは一年以上一緒だったけど、喋ったのは初めてだった。

名前覚えてるんだ・・・。
普段喋らないし、友達も少ない一輝君が名前を覚えていることに失礼ながら
すこし驚いてしまった。

隣に立ち、箱を覗き込む。

「わあー! まだすごく小さい。」

そこにはまだ目も開いていない小さな猫が3匹入っていた。

三匹とも毛は雨で濡れ、ぐったりしている。

そっと白い猫を手のひらで掬う。