でも、せっかく両想いになったけれど…すでに別れの時間はきていた。



ぎりぎりの時間まで喫茶店で遊佐と喋り、写真を撮り…短い時間でたくさんの思い出を作った。



まるで
今までの時間を埋めるように
これからの時間を共に過ごせるように
二人の時間を楽しんだ。




「…何時にここ出るんだ?」



「10時30分発の夜行バスだから…9時頃の電車に乗って行く。」



「…電車まで見送るから。」



「ありがと。

…そろそろ帰らないと。」



喫茶店を出て、電車に乗る。
遊佐は家まで送ってくれるみたいだ。
隣に遊佐がいる…その事が本当に幸せだ。



「んじゃ、また電車の時間に合わせてホームいるから。」




「あ、家…上がっていく?
親いるけど…」



「遠慮しとくわ。
…せっかくの親との時間だろ?」



「ありがと。
それじゃぁまた後でね。」



遊佐と手を振りあい、後ろ姿が見えなくなるまでずっと見ていた。

家の中に入るとママとパパがリビングにいた。



「卒業おめでとう。
熱烈な告白だったわね。
ママ、びっくりしちゃったわ。」



「…色々あったんだな。
お疲れ様。」



「ママ…パパ……ありがと。」



「さ、夕飯にしましょ。
…妃奈の出発はもうすぐなんだしね。」



もうすぐこの家を出るんだという事に寂しくなってきた。
こみ上げてくる涙を抑え、家族三人で楽しくご飯を食べた。