「…以上。」
卒業証書授与式が終わり、次は在校生の送辞。
在校生と向かい合うように回れ右をする。
在校生代表の言葉に涙する人が少し増えている。
私も若干やばい状態だ。
送辞が終わり、次は卒業生代表の答辞。
誰が言うのか知らないんだけど、おそらく生徒会長だろう。
そんなこと思っていると…
「答辞。
卒業生代表、楠木遊佐。」
「はい。」
遊佐の名前が呼ばれた。
隣の子に聞いてみると、生徒会長は後ほど代表として挨拶があるみたい。
だから遊佐が選ばれた、ということらしい。
「…桜が満開の門を潜ってから、早3年。私達は今日、卒業します。
1年の4月。
新しい学校生活に楽しみである以上に、緊張と不安がたくさんありました。」
遊佐が緊張と不安って似合わないな。
そんなこと思いながら聞いていた。
遊佐の声…聞けるのも最後かな。
「---------…
そして2年になり、後輩ができました。」
遊佐らしくない言葉が次々と出てきて笑いそうになってしまう。
初めて見る遊佐の姿に、また胸のドキドキが増していく。
「---------…
そして3年になり……」
それまですらすらと読んでた遊佐の言葉が止まった。
何かあったのだろうか…周りが少しざわついてきた時、遊佐は答辞が書かれている紙を閉じた。
それを見てさらに周りがざわつく。
そんな状態の中、遊佐が話だした。
「…3年になり、俺はある女の生徒と付き合い始めました。」
保護者はわからないだろうが、生徒全員には誰のことかすぐに分かった。
「…いい加減きゃーきゃー言ってくる女子達にうんざりして、その女の生徒に契約と言って見せかけの恋人になってもらいました。」
美紀以外の生徒はその事を初めて知り、口々と小さな声で話し出す。
それでもなお、遊佐は続けた。
「ただの契約、お互い異性に近寄られないようにする…それだけでした。
その女の生徒は俺の事を理解しようと、細かいところまで気づいてくれました。
好きな食べ物、服装…一言も言わなかったのに俺の行動とかを見て気づいてくれました。」
…だって好きだから。
好きな人の事を知りたいって思うのは普通でしょ?
「少しずつ時間を共にしていき、俺の中で変化が出てきました。
…俺はこいつのことが好きなのかもしれない、そう思うようになりました。」
………え?
す…き………?
「そう気づくと同時に、段々と想いが膨らんでいきました。
…このままじゃ想いを告げられない。
そう思い、契約を解除しようと言いました。そしてその後…想いを伝えて、今度は恋人としてそばにいてもらおうと思いました。
…でも俺の言葉が足りなかった、そのせいでそいつには辛い思いをさせてしまいました。」
信じられない言葉が次々と遊佐の口から出てきていて、涙が止まらなくなった。