「…とりあえず、教科書出せよ」




神野君は教室の私の席を指差す。



「と、図書室は?」



「誰かが、こねーのに席だけ取ってるのは迷惑だろ?」



「う、うん。そだね。」



私はゆっくり自分の席に座った。気のせいかなちょっと暑い。



―ガラガラッ―



教室の窓を開けた音がした。



「唯ちゃん、教室って放課後クーラーつかないんだよ!」



ヒカリが横から口を出す。



「あぁ!?そうだった!!」



この、暑い中勉強するの?神野君。




「ま、自業自得ってことだ。」




「え~!?暑いよぉ…」




「うるさい!」




…ごめん。




「私も一緒にいてもいいかな?お二人さん!」



と、ヒカリ。



私はいいけど、彼は…?



「…勝手にしろ。」



あ、うん。



いいみたい。



「カミノくん私も唯ちゃんの面倒見るからよろしくね!」



ヒカリの神野くんって言葉がぎこちない。



ありがとヒカリ。



本当は嫌だけど心配して私に付き合ってくれたんだよね。



「え、えっと、プリントのこれなんだけど…」



と、私はカバンから一枚のプリントを取り出した。



プリントのタイトルには『補習課題』とある。



「…それ、何?」



神野君が指さしたのは、



答えがほとんど分からず赤ペンで解説を写した箇所だった。




「え、先生が補習はこのプリントの答えを写して持ってきなさい…って」



「…バカだろ、お前。」



ふ~って大きく息を吐いた。



く、空気がピリピリするよぉ〜っ!
か、神野君ってこんなにプレッシャーを与える人なの?




「ちょっと!ひどいんじゃない!?」




思わずヒカリが口を開く。




「そりゃ唯ちゃんはバカでドジで、どんくさい残念なチビかもしれないけどさ!いいとこだって少しはあるかもしれないじゃん!」



ヒカリ、フォローって言葉知らないのかな…。
なんか、へこむ。




「…。」



神野君は黙ったまま。