なんで?

 馬鹿な俺は自分が幽霊になってると
 知らずに、そんなのんきなことを
 思ってた。


「春香...」


 もう一度触ろうとしても、するりと
 手はすり抜ける。



 何度も、

 何度も、何度も...


 同じ事を繰り返しては「なんで...」と
 声をだした。



 絶望が俺を底へと落とす。


 文化祭で一緒に見て周ろうって
 言ってたのに

 
 楽しみだねって春香が楽しそうにして
 笑っていた姿さえも


 もう、俺に向けられることがないのか?


「冗談、やめろよ....」



 ハハって笑っても、うまく笑えない。
 
 

 
 春香...


 おい、起きてんだろ?

 目ー覚ませよ...

 俺に気づけよっ...!!!!

 
 
「春香っ........」



 抱いてみたいと思っても、やっぱり
 体はすり抜けて。



 触れられないもどかしさに涙を流した。