一正は襖越しに見える侍女や家臣を見る。
ふらつきながら立ち上がると、一正は全ての臣下を下がらせた。
「これで、わしら五人だけ。」
三人を見て一正は言う。
「こっからは、偽りなしの本心で話をしようや。」
「望むところ。」
秀尚は頷く。
「異論はありません。」
リアンは笑む。
一正は再び、元の位置に座る。
「それで、その者は?」
秀尚は雅之を見る。
雅之は笠を外すと三人を見据えた。
瓜二つの顔に三人は驚いていた。
「――元、成田国所属の傭兵。八倉雅之。」
そう名乗る。
「瓜二つの顔……成る程、影武者ですか。」
「御存知のようで。」
「何も知らぬ者でもこの状況を見れば、何となく察しはつきます。」
リアンは笑みを浮かべる。
雅之は疑いの目を向けた。
(否定も肯定もしない、か。)
知らない顔を突き通すわけでも、あからさまに知っていると主張するでもない。