景之は一階の奥にある茶室に居た。
茶を点てるような雰囲気ではないし、一人になれればなにもここではなくとも良かったようにも見える。
辻丸が来たことで不快そうにした。
「去れ。」
そう言うとそっぽを向く。
「急に意見を変えたから、気になったんだ。居るくらいどうってことないだろう？」
「目障りだ。」
景之は横目で睨む。
「……そんなに暇なら白湯を持って来い。」
そう言われて辻丸は立ち上がる。
「はいはい、当主様。」
めんどくさそうな口調で言う。
それに対して此方を向きもせずに無視する景之に辻丸は不服そうだ。
足元に目を向けると、床に何か液体が３つ、４つと点々としていることに気付いた。
「？」
それに触れると、血だと解る。
「この血……」
背を向けている景之を見る。
ぐらり、と景之の身体が傾いた。
「おい！」
それを支えると、景之は辻丸を跳ね除けた。
「少し、無茶をしたようだが問題ない。」
“早く言われたことをしろ”と言うような景之に辻丸はこれ以上問うても仕方ないと思い、部屋を出た。
咳をする音が僅かに聞こえた気がした。
（あれだけの力だ。負担もかかるよな。）
そう思いながら、白湯を受け取りに行った。