遥葵が近づいてくる。
「あー……」
遥葵は少し申し訳なさそうにした。
「別に、痴話喧嘩を邪魔する気じゃあなかったんっすけどね。」
「どこが痴話喧嘩だ。」
景之は無表情だ。
「御託は良い。用件は?」
「負傷者達が医療室だけでは入りきれなくて。」
「二階の空いてる部屋を好きなだけ使え。」
「一階は?」
「やめておけ。」
遥葵に景之は言う。
「なにかあるのか?」
辻丸は首を傾げた。
「何があるか解らない。荷物が未だ整頓されていない。研究所から持ち出したものもある故、何が起ころうとも責務は負えぬ。」
「そんなに危険ならもっと早く片付ければ良かっただろう。」
「危険性は低いが、予測が出来ぬだけだ。」
景之は冷静に答えた。
「わかった。二階にはこびまーす。」
遥葵は景之にやる気がなさそうな口調で返事して、兵の方へ走る。