つぅ、と赤い血が落ちる。
赤い血が黒い影に変わり、景之へ向かう。
「やはり、秘薬を使っていたか。」
「そうよ。」
景之はその影を斬る。
「無駄よ。」
影は斬られても尚、迫り来る。
それを避ける。
女性の攻撃を避けながら景之は戸尾を見た。
「その様子だと、王命ではないようだな。この行動がどういう意味か、理解しているのか。」
「あぁ、処罰されようと殺されようと構うものか。それに、今の国王に従い続けるのもいい加減嫌になった。丁度、この女が邪魔者を排除する手伝いをしてくれるというものでな。好機だ。」
「軽率な。」
「動けど動かねど、変わらぬよ。はは、」
戸尾は誰かに合図をするように手を振る。
「!」
景之は飛び退く。
「グオォオオオ」
唸り声とともに地面が割れる。
黒いものがうねると、景之に迫り来るものを防御した。
“きをつけなよ”
「煩い。」
少年の声に景之は冷たく言う。
その迫り来るものは異形だ。
「あの時の秘薬の情報は未だ未完全なものだったし、全てではなかった。それは、私が開発した中で生まれた失敗作よ。……見た目はこうだけど、強いのよ?」
女は笑う。
「この異形の兵と、秘薬の力。これがあれば、お前など容易く屠れる。」
戸尾は自信があるようだ。
「私は秘薬を完全なるものにした。精神が呑まれることもない、永遠の力と若さ。……未完全な貴方に勝てるかしら?」
艶やかに笑う女は景之を見据える。