屋敷を裏手から出て、歩いていると兵士が向こうからやって来た。
「八倉殿!」
成田城の兵なのは直ぐに解った。
「細川の兵が此方に攻めてきます!!」
「!!」
景之は驚く。
「戸尾部隊のようです。」
「王命か?」
「さぁ。……しかし、その可能性は否めません。」
「……事情は解らないが、迎え撃つまでだ。狙撃部隊、歩兵部隊は既に出ているか。」
「はい。」
「槍部隊を表へ、歩兵部隊を裏手へ。奴らのことだ。一部隊とは思えぬ。残りの兵を屋敷内の警備につかせよ。攻撃はするな。」
そして、城を見た。
「戦ならば、城主が居ない訳にもいかぬか。」
景之は辻丸と良寧を見る。
「おかしな状況になったものですね。普通はこのように唐突に戦が始まらないと思うのですが。」
「八倉家から今度こそ全てを奪うつもりなのだろう。」
(父を奪ったあの時のように。)
良寧に景之は答える。
「物見櫓へ向かう。」
そう言って身を翻した。
「あの女のことはどうするんだよ!?」
「今は城を守るのが優先だ。」
(厄介だ。)
景之は舌打ちをした。