男は慣れているような顔で見ている。
（ひょっとして、昔は茶飯事だったのか？）
辻丸は景之の様子と男を交互に見る。
「前当主様からのものでしょう？」
「構わぬ。」
「遺品だったのかよ！」
男の言葉に辻丸は驚く。
「その刀が一番軽く、丈夫で、尚且つ使いやすい。足出纏いになられたくないからな。それに」
景之は男と辻丸、そして良寧を見る。
「その武器は黄龍殺しとも言われている。どういった経緯で手に入ったかは知らぬが、研究で使用する為に闇夜の一族を殺めたという話は聞いた。……闇夜の一族の能力を持つこの秘薬は普通の武器が通用するほど容易ではない。」
「まさか、負ける可能性の話ですか？」
「勝つ自信はある。」
表情を変えずに言ってのけるのはどこか、雅之に似ている。
（自信家は血筋なのか。）
辻丸は景之を見る。
「最悪、奴よりも俺を殺さねばならないことになるだろう。それは、何も今に限った話ではない。これからもそうだ。……思い出したついでだ。」
そう言って歩みだした。
「どういうことだよ。」
「低脳。解れ。」
面倒だというように景之は冷たく言う。