辻丸は状況を把握することで頭が一杯だった為、実感がわかない。
だが、その表情に今のことがどういうことかを把握した。
「その前に、妖怪共の集落があるはずだ。大村の所も……」
「青龍の血と黄龍の血。どちらが強いかわかるでしょう?」
良寧は景之を見る。
「俺が行く。奴を殺す。」
景之は立ち上がる。
「おい、急に行くつもりか?」
「急も何も、今被害が出ている。これ以上放ってはおけぬ。これは、奴だからではなく、我々の失態だからだ。資料を奪われたことで起こったことを他人任せにできるものか。」
辻丸を真っ直ぐに見る景之に良寧も頷いた。
「行きましょう。」
「貴様らは此処に居ろ。俺一人でも」
“ゴッ”
良寧は景之の顔面を容赦無く全力で殴った。
「――っ!!っ!!」
言葉に出来ない痛みに景之は顔を手で覆って前屈になった。