それから少しして2人が来た。
「陛下。」
真っ先に利光が近寄る。
「顔色が優れないようです。」
「こっちへ来る時に飛ばしすぎたせいやろうなぁ~、はっはっは!」
一正は笑う。
利光の察しの良さに雅之は静かに警戒した。
「そちらに居られるのは?」
「道中色々あってな。彼は傭兵や。」
「まさか、また」
「雇ってないからそんなに睨むなや。」
「……失礼。」
一正に頭を下げて利光は雅之を見る。
「それで、ご要件は。」
不愉快そうに利光を睨んで、一正を見る。
利光は恐縮している様子で秀尚より後ろへ下がった。
「重要な話や。こっちへ。」
一正に誘導される形で2人が部屋に入る。
「秀尚、利光。」
真っ直ぐに真剣な眼差しで見詰める。
「わしはこれより、政から身を引く。今までのように、後継関係で関与することもほぼ無いと思え。」
そう言うと深呼吸した。
「民が笑って暮らせる世界。それがわしの願いで、その為に生きてきたが……」
そこまで言うと、咳き込んだ。
「げほっ、げほっ……」
そこに手を伸ばしたのは、利光や陸羽ではなく雅之だ。
“しっかりしろ。駄目国王。”
“やかましいわ。わかっとる。”
視線だけでそう言い合う。