影は景之の腕を伝い、手先で止まる。
そして、形を変え、刀になった。
「この血は戦いに飢えている。」
そう言うと刀を振り上げた。
切られると思い、辻丸は目を見開く。
真横を刃が横切り、地面に刀が刺さる。
「本気で暴走すれば、人間には到底対処できまい。」
辻丸は景之を見る。
その目は既に平静で、無感情だ。
「これに懲りたら気安く踏み入らないことだ。」
景之は刀から手を離す。
刀はどろりと溶けて、黒い血溜りになった。
(もしかすると、感情を殺していたのも他人と相入らないのもこうなることを避ける為か?)
ならば、自分は……いや、皆が誤解をしているのかもしれない。