まさか、あの子供がこれだけ毛嫌いしている者を追うように思っていなかった。
「来るなと、言ったはずだ、」
そこで不自然に言葉が途切れた。
“にんげんなんて、ころしちゃえばいいんだよ。”
そう話している声が脳内で反芻する。
「……――、小童の分際で」
ふらりと立ち上がると呼吸を整えた。
小石を踏んだのか、足の裏が血塗れだ。
“どーしてぇ~?ねぇー、ころそうよ。”
その声に視界がぼやける。
(情を殺せ。死んだものの言葉など知らぬ。)
景之は深呼吸をした。
「一体、どういうことか説明をしろ。」
辻丸はその言葉と同時に変化に気付いた。
景之の足元から影のようなものがうねっている。
「闇夜の一族は血を武器に変えるなどの特殊能力以外に、血に自身の感情を宿すことが出来る。」
そう言うと影は景之にまとわり付く。
「“秘薬”は闇夜の一族の死体を元に作られている。故に、血に宿った感情がこうして暴走することがある。」
いつもの淡々とした口調で言った。