その目は何処か悲しげでいつもの無感動さが揺れたと感じた。
「はじめから、わかっていることだ。」
そう言ったのは真実を知っているということか、箱の中身のことか。
辻丸には両方に見えた。
「この箱の中にあの人が居ると思っていたい。」
その言葉がきっかけで感情が流れるように表情を歪めた。
(惑うな。)
景之は自分を抑制させようと背を向けた。
(こんな子供に何を掻き乱されている。)
息苦しさを感じてぜいぜいと息をする。
「おい、大丈夫か?」
辻丸は肩に触れようとする。
(静まれ。こんなこと、大したことではない。)
「余計な干渉をするな、人間。」
手を払い、呼吸がままならない様子で崩れ落ちた。
(人間などに)
“そうだよ。”
思考を遮るように声が降ってきた。
幼い子供の声。
「!!」
景之は立ち上がり、外へ飛び出す。
「おい!」
「来るな!!」
余裕を欠いた顔をして走り去る。
(どうしたんだ?)
明らかにおかしい様子に辻丸はその背を追う。