景之は荷物を解いて片付け始める。
「調べもついている。何より、あの言葉こそが肯定だ。」
そして、木箱を辻丸へ渡した。
「開けてみろ。」
投げ遣りに言う。
誰にも触らせなかったものをこうも簡単に渡すとは思わなかった辻丸は木箱と景之を交互に見る。
景之の目は平静だ。
いつもの無感動な目。
冷たささえ感じないような虚空を思わせる黒。
「大事なものではないのか?」
「そんな情はない。」
真っ直ぐ答えたのは自分を守っているようでもあった。
そう思うのは同情心だろうか。
辻丸は木箱を開いた。
中身は、何もなかった。
「……え?」
辻丸は目を丸くする。
「そうだ。」
景之はゆっくりと近付き、木箱に触れる。