羽織を椅子に掛け、片付ける姿勢に入る。
「目を逸らすな。」
真っ直ぐに辻丸は景之を見据える。
「殺されたいのならば、話を続けるがいい。」
景之は辻丸を見据える。
冷たい空気が流れる。
「おれは殺されることに恐怖していない。」
辻丸は容易く言ってみせる。
「本当は気付いていた筈だ。どう考えても、妖の血が流れる者を人間が殺せるはずはない。人間はどう足掻いても妖には勝てない。それに、家臣数人もとなれば遊女である人間が一人で殺せるはずはない。」
その言葉を景之は黙って聞く。
「真実を知ろうとしていない。何が怖い?」
辻丸は景之から視線を動かさない。
「人間を蔑むことで、自分を守っているのか」
核心を突くように鋭い問いに似た言葉が吐かれる。
「細川と似たようなことを言う。」
景之はぽつりと言う。
「真実、か。」
僅かに眉が動いた気がした。