「秘薬によって力を得た八倉家への重圧のつもりだろう。」
淡々と言う。
「そこで俺は解った。人間が如何に愚かで浅はかか。」
その言葉に辻丸は何も言い返さない。
「……全部の人間がそうではないと、あんたは解っていた筈だ。」
静かに見据える。
「人間が悪いのだと言うことで、あんたは女を憎みたくはなかったのだろう？」
「何を言っている。」
「女ではなく、人間を恨むことで目をそらし続けた。」
「世迷いごとを。」
景之は嘲る口調をする。
「女だけでない。細川に対してもそうだ。」
「黙れ。馬鹿らしい。」
付き合ってられないというように景之は足を進める。
「あんたは全てうしなった理由を人間に押し付け、逃げていただけだ！過去から動けずに立ち止まっている。いつまで、そんなものに縋り付いてるつもりだ！！」
辻丸は木箱を見る。
「黙れ、と言った筈だ。」
景之は静かに見据える。
「敗戦国の分際で過ぎたことを言うな。貴様は己の立ち位置を知らぬのか？」
淡々と言うと部屋に入る。