景之は酷く冷静な表情で領地に戻る。

『雪?』
義明は景之のその表情に困惑した。
『……俺は、無力だ。』
ぽつりと呟いて、刀に手をかける。
その刀を義明に渡して背を向けた。
『斬って構わない。……どうか、時間をくれ。』
そう言うと研究所へ馬を走らせた。
『待て!』
何をしようとしているかは直ぐに解った義明が追う。
『雪!何があったかわからないが、早まるな!!』
研究所に着くと、義明が景之を掴む。
『人体実験は必要だ。だから、俺が被検体になる。……狂ったならば斬ればいい。』
『止せ。自暴自棄になるな。』
『貴様には何も解らない!!』
景之は義明を突き放した。
その表情は苦悶に満ちていた。
『雪。お前は、何に苦しんでいる?何があった。教えてくれ。』
『……人間の愚かさに気付かされただけだ。』
問いに吐き捨てるように答えて足を進めた。