2人と家臣達で研究を続けていた。
非難や困難はあったが、今にしてみれば些細なことだった。

やがて、闇夜の一族の研究が功を成し“秘薬”を作り出した。
その成果を立証するには人体実験が必要だと景之は主張していた。
『雪。それは道徳的に反する。』
『しかし、これは我々の研究が認められる唯一の手段です!』
『ならぬ!』
激高する義明に景之も反論する。

その論議は1年にも及んだ。

未だ未解決のままで話は平行線を辿っている。
その最中、制度が変わり、遊女だった女を側室として八倉家へ向かい入れることとなった。
10つになる息子には未だ会わずにいた。
傭兵としてたらい回しにされていて、呼び戻そうにも出来ない状況だ。
それに、現状がそれどころではなかった。
『大和が来て、お前も安心しただろう。』
『薫です。彼女を源氏名で呼ぶのはお控えください。もう、遊女ではないのですから。』
『おお、すまんな。』
義明は景之の肩を叩く。
彼女の源氏名は“大和之姫”といった。
通称は大和と呼ばれているらしい。
本名は伊井薫。
八倉家へ迎え入れた時に、八倉の姓となった。