無感動な表情で辻丸を見据える。
「本人に会った時にでもきけ。」
そう言いながら、荷物を見る。
「……いいや。」
気が変わったとでも言うように再び辻丸へ視線を戻した。
「知ったところで到底理解は出来まい。」
荷物を解くと、大きめの木箱を取り出した。
大切そうにその蓋をそっと撫でる。
蓋には幾つもの錠前がしてある。
「この中に居る。」
「まさか……」
(遺骨?)
辻丸は目を見開く。
景之は無感動な目を細めた。
「そうだ。」
肯定した様子から、その箱に入っているのは細川一正により殺された男なのだと理解するのには時間はかからない。
そして、同時に誰にも触らせなかった理由も理解した。
「もう、随分と昔の話だ。」
自嘲気味に言う。
「貴様が予想するように、この者の国は上尾でも成田でもない。」
「じゃあ、何故細川が殺す必要があったのだ?」
辻丸は怪訝そうにする。
「それが、奴のやり方だ。」
そう吐き捨てると、過去を思い返した。