成田城では辻丸が渋面で景之と対峙していた。
正確には、小姓として辻丸が景之の身の回りのことをしているのだが。
『今も昔も、貴様が殺した男に俺は仕えている。』
一正へ言っていた言葉が気にかかっていた。
「おい。」
辻丸は偉そうに景之を見る。
「小姓の分際で気安く呼ぶな。」
そう言うと研究所の荷物に手をかける。
成田城へ向かう際にいくつか持って来ていたらしい。
しかし、その荷物は自分で持っていて辻丸や家臣には触らせなかった。
そのことも気になっていたが、先に一正が殺した男について尋ねた。
「なぁ、あんたが言っていた“殺した男”って何だ?上尾や成田の者ではないだろう。」
「そんな言葉に気を取られているとは、人間らしい。」
馬鹿にしたように言う。
そして、無感動な目をする。
「情報を得る場合、それと対等な価値が有るものを渡すのが当然の態度だろう。貴様は何を対価にする?」
空気が張り詰め、互いに視線がぶつかり合う。
「何が知りたい。人間に興味などないくせに。」
「ふん、解っているではないか。」
鼻で笑うような口調で言う。