軽く、襖に手をかける気配がした。
「失礼します。」
そう言って、茶々が入ってきた。
「お言葉ですが、先程の話を聞かせていただきましたところ、八倉殿の言い分が正しいかと。」
茶々は襖を閉めて一正を見据えた。
「だが、国は農民によって出来ている。」
「今更、農民に無理をさせることは確かに不満を呼びます。揺らぐこともあるでしょう。しかし、国の礎とは、他ならぬ、兵士なのです。兵士は国民を守り、戦い、豊かにするには欠かせない存在なのです。」
「解っとる。」
一正は眉を寄せた。
「急な値上げは不可能や。徐々に上げていく。」
そう言うと、雅之が手渡した資料に目を遣った。
「この、廃止していた税金、“酒”“煙草”“風俗”を課税する。他の税金を上げれば苦しくなるからな。」
「では、そのように御布令を出せ。」
一正にそう言うと、雅之は踵を返した。