遥葵はむぅっとした。
「でもでもー……やっと会えたし……」
しゅんと眉を下げる遥葵に雅之は構わずにすたすたと歩き出した。
「あー!」
遥葵はぎゅうっと抱き締めて引き止めた。
「何をする!俺は急いでいるんだ。」
雅之は言う。
「むぅ。いつあえるのー!ねぇねぇ!!次はいつ!?」
「煩いぞ。」
そう返したのは雅之ではなかった。
振り向くと柚木が居た。
「使者が遅いと思えば……」
呆れ顔の柚木に遥葵は目を伏せる。
「申し訳ございません。」
形だけの謝罪を述べる。
「いいや。引き止めたんはわしのほうや。」
雅之は一正のように笑う。
「陸羽派の件か。」
「わしはそんな野暮なことはせん。」
にんまりと笑う。
「べっぴんさんやさかいな。」
そう言うとくるりと背を向けた。
「ほな。またな、月雲。柚木。」
挨拶をすると、馬に乗って走り去った。
「むぅ。」
遥葵は不満そうだ。