しばらくの沈黙があった。
「……清零国の軍師。貴方の命で父様を殺した人。」
狐子は怒気を抑えて言う。
「そうか。」
(清零国……やはり、リアンの奴やな。)
一正は冷静な表情で狐子を見た。
「甘言と言われようとわしは構わん。だが、あんたは……そうやって、片端から人間を疑って楽しいか?」
「楽しい?」
狐子は仮面越しに一正を睨み付けた。
「そんな感情はもう感じない。家族を奪われたあの時に全て失った。」
「……狐子。」
一正は狐子に歩み寄った。
「こんなことを言える義理やないし、わしのキャラでもないけど……」
そう言って、言葉の先を紡ぐ。
「あんたには、辛い思いをさせたな。」
「今更、そんなことを言われても……」
狐子が戸惑っている間に一正は素早く座った。
「悪かった。この通りや!!」
一正は地に額を擦りつけんばかりに土下座した。
狐子は黙ってそれを見ている。
「どうして……?狐を……狐は“化け狐”ですよ?誰にも必要となんて」
「わしはあんたが必要や!!」
一正は顔を上げて叫んだ。
「今から、あんたの居場所はここや。」
優しく諭すように言った。