――酒田国が細川国と戦っている頃

父親はこの国では珍しく傭兵をしており、酒田国からの依頼で細川国へ行く準備をしていた。

さらに、枯れ木を甦らせたり、怪我を治せたりする不思議な術が使えた。

それは“奇術”と呼ばれた。

奇術師の家系はここでは当たり前で、種類は違えどよくいる。
空を飛んだり、物を武器に変えたりと様々だ。
だが、必ず、1つの能力だと相場が決まっている。

でも、父は違った。
治癒・戦闘・移動など様々な奇術が使えた。

最初は重宝された。

しかし、時が経つと、それを疎ましく思う輩が増えた。

いつしか、父親は“化け狐”と呼ばれるようになった。
だが、父親は平気そうにしていた。

母親もそんな父親を愛していた。

『行ってくる。』
『行ってらっしゃいませ。』
父親が微笑むと母親もそれに応えた。