そして、部下も付けずに戦場を駆けた。

辺りに蔓延る硝煙の匂い

地面に転がる髑髏

耳から離れない悲鳴や断末魔の叫び

(嫌な世の中や。)
そう思って、“戦など無意味や”と口にしかけた。

しかし、やめた。

そんなことは誰もが分かっていることだ。

けれども、逆らえない。

誰かが“戦を続けよ”と下知し続ける限り

人と人が反発し合う限り


一正はひたすらに戦場を駆けた。

『一正殿!?』
それを見た2名の兵士が驚いた表情で一正に駆け寄った。
『お戻り下さい。危ないです。』
『総大将が討たれたらお終いですからね。』
兵士が口々に言う。
『皆がわしの為に死ぬ。なのに、わし1人がのうのうと安全な場所に居られるわけないやろ!!』
一正が怒鳴ると、2人は顔を見合わせた。
『なれば、お供致します。』
『……致し方ない。』
2人は一正に付いて行く。