「ほらほら羽衣奈! あれ、宙くんだよ!」


抜きつ抜かれつ、レースは目まぐるしく展開していき、ついに終盤戦に突入。
スタートからまだ数分も経っていないというのに、ゼッケンを身につけた最終走者たちが次々とテイクオーバーゾーンに並び始めた。


その中で屈伸をする、赤ゼッケンの男子に目がとまる。
いつになく真剣な彼の表情に、


――ドクリ。


「……っ、」

不意に大きく脈打った心臓を、慌てて押さえ付ける。

だめだだめだ。
なんか私まで緊張してきた。


アンカーとその前の走者だけは、連続で男子が走ることになっているけれど。
いくら男子とはいえ、一周を全力疾走って絶対きついと思う。

だってほら、最後の方とかもう皆よれよれで、――