「あの、だいじょうぶ・・・?」

突然、光が飛び散って、何もかもがはじけた。鮮明になった。
まぶしすぎる。たまらず、目を開けた。


「・・・死んじゃうの?」

「知るかよ・・・。」


黒い髪を優美にまとめ、朱色の髪留め。
肌は白く、さわっただけで、崩れそうだ。

瞳。そうだ、おれを救ったあの瞳。

やわらかい茶色の瞳。
わくわくしてるみたいで、心配してる。そんな不思議な瞳だった。



「なまえは・・・?」

「ねぇよ、んなモン。」

「どうして?」

「奴隷だったから。雇い主が死んで、逃げだしてきた。」



そっか・・・とその子は呟くと、おれの頬にさわった。
寒さですっかり冷えてる。でも、ちがう冷たさだ。


「あなたは、ふしぎな色の目をしてるのね。」


その子はふふっと笑う。
まただ、世界がきらめく。白と黒の世界に虹ができる。


「奇妙丸。」

「は?」

「ふしぎな紫の目をしてるし、あなたは男の子だから。だから、奇妙丸。」