あんなに孤独に慣れていたのに、あんな
に孤独が気持ち良かったのに。



今じゃ、その孤独へと戻るのが酷く怖い
んだ。



"失う"ことに異常なまでに怯えている俺
は、いつになったら前を向けるんだろう




きっとまだ、半歩振り返った状態。完全
には、前を向けていないから。



いつの間にかうつむいていたからか、視
界に入るのは、白くなるほど強く握られ
た自分の拳と、床。



こんな風に訳のわからない事を言われて
も、栄生君が困るだけだなんてわかって
いるけど、もう自分でもどうしたらいい
のかわからない。



ただ───。



「戻る必要なんて、無いだろ?」



それまでずっと黙って俺の話を聞いてく
れていた栄生君の声が、優しくて。



ハッと顔をあげれば、すごく優しい笑顔
を向けてくれていたから、泣きたくなっ
た。