揺れる瞳は俺に何を訴えていたのか。



唇に触れた温もりも、今はどこか幻のよ
うにも思えて。



人差し指で、自分の下唇をふに、と圧迫
してみる。



少しかさついた自分の唇。あの時重なっ
た美海の唇は、すごく柔らかくて──。



なんで、キスなんて……。



美海が見えなくなってから、ただただそ
の疑問ばかりに囚われていた。



だけどあれから美海の連絡はない。



アドレスくらい、交換しておけば良かっ
た、なんていってももう後の祭りで。



もう、なんなんだよ。



いつも俺を乱していく。俺の脳内を、ぐ
ちゃぐちゃにしていく。捕まえていく。



「……なんなの…ほんと」



お陰であの夏からずっと……。



君が俺から、消えない。