あの蔑むような瞳が忘れられない。



俺でさえ、あんなにぞくぞくっと悪寒が
走ったんだ。実際に向けられていた美海
はきっと、もっと辛かった。



「……私ね、東京の高校受けたいの」



頬杖をつきながら、そう呟いた美海。



「全寮制の高校にはいって、あの家から
抜け出したくて。だから、下見のために
東京に来たんだ、私」


「……そう…」



だから東京に来たのか……。



「でもあの人は猛反対しててね。ほとん
ど喧嘩するようにして、家を飛び出した
の。……でも、負けない。絶対東京に来
る」




そう言いきった美海の瞳には、強い意志
が宿っていて。



「……応援、してる」



俺に出来るのはそのくらいだ。



そのくらいしか……出来ないんだ。



なんの役にも立てない自分が悔しくて、
それでも自分で立ち上がれる美海が、眩
しいくらいだった。