義徳、いや、鷲尾奏主演の今度のドラマは2時間物だ。

義徳扮する新任教師が赴任先で巻き起こる殺人事件を、生徒と一緒に解決していくストーリーらしい。

実習期間が終わった夏休み、松澤先生に誘われ撮影の見学に来ている。

もちろん怜央も一緒だ。

「まさか、生で鷲尾さんの演技が見られるなんて……」

「うわあ、義君かっこいい!」

義徳の姿にうっとりしている松澤先生と幼馴染みの別の顔にすっかり興奮している怜央を、わたしは若干呆れ気味に見る。

でも、芝居をしている義徳がかっこいいのは事実だ。

見学に来る前に、怜央たちが録画していたドラマを見たけど、どれに出演している『鷲尾奏』も、わたしのよく知る幼馴染ではなかった。

デビュー前も劇団には入っていたけど、そのときよりも洗練されている感じだった。

こうして役者として仕事をしている義徳を見ると、あの日東京に行かせて正解だったと思う反面、危惧していたことが現実になってしまうような気がした。

手の届かないところに行ってしまう……