タカシを好きな理由…それは真面目で常識ある所だ。

帰りの電車の中、彼はお年寄りに席を譲った。
私も彼に並んで立とうとしたが、彼の手が顔に向けられた。

「アンパーンチっ」
「痛いよタケパンマン」
「メアキンマンは寝てなさい」

これは座っていていいよという意味だ。彼は直接言ったりはしない照れ屋さん。
だから好きって言葉すらも行動で示す。それがさっきのビルでの出来事。
しかし、口に出さないのは好きではない気がしてならない。それを聞いた所でタカシが口に出すとは思えないが…

「じゃあな」
電車がいつもの駅に止まると彼は早足で降りた。
「ばいばぁーい」
笑顔で手を振る私にタカシも微笑む。

するとタカシの横を男が横切った。
あ…あの人、アイドルのアレに似てる…えっと~私の好みの…

ガタン・ガタン…

そう考える間にいつしか電車は走っていた。