確かに、藍は危ない賭けをした。
有明とダンに全てを任せるという。
それというのも、九木の元へ向かう前に天音に言われていたのだ。
中生代、恐竜がいた時代の空気は酸素が濃い。
人はすぐに気絶するだろうと。
「あー、ほら、有明のこと信じてたからさ」
「嘘だろ過去にいく前ギリギリまで疑ってたくせに」
じとりと睨まれ藍はひるむ。
事実、藍は有明が九木側の者だと途中まで疑っていたのだ。
しかし、藍は一応ダンには頼んでおいたのだ。
『私が動かなくなったら、星がたくさんほしいって言ってね』
過去へ飛ぶ前「ピエロ伝道者」を叫んだのはあくまで保険だった。
結果的にそれに助けられたが。
有明の話では、藍が動かなくなるとダンは泣き出してしまったらしい。
「背負わせすぎちゃったよね」
「あぁ?」
「ダンのこと」
悪いことをしたな、と今になって思う。
6550万年前。
見知らぬ場所。
ずっと一緒にいた藍は動かない。
九木という大妖怪。
そして、これから自分は死ぬという運命。
長く生きていたといっても、根本はまだ小さな子供。
そりゃあ泣き出すわな、と思う。